失敗しないベンダー選定の5つの基準|コンサル経験者が徹底解説

失敗しないベンダー選定の基準

はじめに

基幹システムの刷新やDX推進のプロジェクトで、「複数のベンダーから提案を受けたものの、何を基準に選べばいいか分からない」と悩む発注担当者は少なくありません。

SIerで4年半、ITコンサルファームで4年半、要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応してきた経験から言えるのは、プロジェクトの成否の半分近くは、ベンダー選定の時点で決まっているということです。提案書の見た目や価格の安さだけで選んでしまうと、後から「言った・言わない」のトラブルや、想定外の追加費用に悩まされるケースを数多く見てきました。

この記事では、発注側の立場で実際に使える「ベンダー選定の比較軸」を、ベンダー側の視点も交えて解説します。

よくある失敗パターン

本題に入る前に、発注側がやりがちな失敗を3つ挙げます。

1. 価格の安さだけで決めてしまう:安い見積もりには理由がある(要件の読み込みが浅い、後から追加費用が発生する前提になっている等)ケースが多い

2. 提案書の体裁・プレゼンの上手さに引っ張られる:営業力とプロジェクト遂行力は別物

3. 「大手だから安心」という思い込み:大手でも、実際に現場に入るチームの力量次第で品質は大きく変わる

ベンダー選定で見るべき5つの軸

①要件の理解度(提案書の「解像度」を見る)

提案書が、自社の課題や業務内容をどれだけ具体的に反映しているかを見ます。テンプレートをそのまま流用したような抽象的な提案書は要注意です。RFP(提案依頼書)に書いた固有の課題や用語が、提案書の中でどれだけ具体的に言及されているかを確認してください。

実際に私が担当したプロジェクトでも、ベンダー選定が十分に行われないまま契約・開始してしまい、いざ要件定義のフェーズに入ってから、選定したベンダーがその業界についての知見をほとんど持っていないことが判明したケースがありました。業界特有の専門用語や「業界では当たり前」とされる商習慣を一つひとつ基礎から説明する必要が発生し、要件定義だけで想定以上の工数を費やすことになりました。提案段階で、同業界・類似業界での実績をどれだけ具体的に確認できるかが、後工程の手戻りを大きく左右します。

②体制・アサイン予定者の経験

提案時に出てくる「予定体制図」は、あくまで予定です。実際にプロジェクトにアサインされるメンバーの経験・類似案件の実績を、提案段階で名前入りで確認することをおすすめします。ベンダー側は往々にして、提案時はベテランを前面に出し、受注後に別の若手チームに差し替えるということが起こり得ます。契約書や提案書に「主要メンバーの変更時は事前承認を要する」旨を盛り込んでおくと牽制になります。

これも実体験ですが、提案段階で対応してくれた営業担当は非常に優秀で評価できる人物だったにもかかわらず、実際の開発フェーズに入るとコミュニケーションがうまく取れないメンバーがアサインされてきた、というケースがありました。「営業の印象が良い=実行チームも優秀」とは限らない、というのは身をもって学んだ教訓です。

③見積もりの前提条件の明確さ

見積金額そのものより、その金額が何を前提にしているかが重要です。

  • 要件定義フェーズでの追加・変更がどこまで金額に含まれているか
  • 想定工数の算出根拠(人月単価×人月数の内訳)が開示されているか
  • 「別途見積もり」となる範囲が明記されているか

ここが曖昧な見積もりは、後工程で追加費用が発生するリスクが高いというのが実感です。実際に、要件定義が完了したタイミングでベンダーから「実装するにはこれだけの工数が必要です」と、当初の想定を大きく上回る見積もりが提示された経験もあります。金額の数字そのものよりも、その見積もりが何を前提にしているか、要件定義フェーズでの変動がどこまで織り込まれているかを事前に確認しておくことの重要性を痛感した出来事でした。

④コミュニケーションの取りやすさ(選定プロセス中に見極める)

提案依頼から契約までのやり取りの中で、質問への回答の speed・的確さ・こちらの意図を汲み取る力を観察してください。選定プロセス中の対応は、契約後の対応品質の先行指標になります。選定中は丁寧でも、契約後に態度が変わるベンダーも残念ながら存在するため、できれば複数回のやり取りで判断材料を増やすのがおすすめです。

⑤リスクへの向き合い方

優れた提案書は、良いことばかりを書きません。想定されるリスクとその対応策まで言及している提案は、プロジェクト経験が豊富なベンダーである可能性が高いです。逆に「できます」としか書いていない提案は、実際に始まってから想定外が多発する傾向があります。

比較表で評価する(相対評価にする)

複数ベンダーを比較する際は、上記5軸にそれぞれ重みづけをしたスコアシートを作ることをおすすめします。感覚的な「印象」だけで選ぶと、後から選定理由を説明できず、社内稟議や監査で困ることにもなります。

(評価シートのテンプレートはnoteで配布予定です)

まとめ

ベンダー選定は「価格」と「体裁」だけで判断すると高い確率で後悔します。発注側に専門知識がなくても、上記5つの軸を押さえて質問し、回答の中身を見れば、プロジェクト遂行力のあるベンダーかどうかはかなりの精度で見極められます。

なお、ベンダーとの契約条件そのものをより体系的に見直したい場合は、IPA(情報処理推進機構)が経済産業省と共同で公開している「情報システム・モデル取引・契約書」も参考になります。発注者・ベンダー双方の役割分担や契約条項のひな型がまとまっています。

次の記事では、この比較軸をRFP(提案依頼書)の時点でどう仕込んでおくかを解説します。


執筆者プロフィール:SIerで4年半、ITコンサルファームで4年半、要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応。基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。

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