はじめに
情シスやIT推進部門で発注側としての経験を積んできた方から、「この経験は社内でどう評価されるのか」という相談を受けることがあります。営業や企画のように成果が数字で見えやすい職種と比べて、発注側のキャリアは評価がわかりにくいと感じる方が多いようです。
評価されにくい理由は「成果の見え方」にある
発注側の仕事の成果は、「プロジェクトが大きなトラブルなく進んだ」「システムが予定通り稼働した」という、問題が起きなかったこととして表れることが多いです。これは営業の売上のように、わかりやすいプラスの数字としては見えにくい性質があります。
「何も起きなかった」ことの裏には、リスクを先回りして潰す、ベンダーを適切にマネジメントする、といった地道な働きがあるのですが、この部分は周囲から見えにくく、評価のタイミングで正当に反映されにくいという構造的な課題があります。特にトラブルが起きたプロジェクトは注目されやすい一方、トラブルを未然に防いだプロジェクトは「何事もなかった」で終わり、誰からも評価の対象として意識されない、という非対称性が起きがちです。
社内評価を高めるためにできること
この構造的な課題を踏まえたうえで、発注側担当者が社内評価を高めるためにできることがあります。
- プロジェクトの節目(企画承認、本番稼働など)で、経営層・関係部門に向けて成果を定量的に報告する機会を自分から作る
- トラブルを未然に防いだ場合も、「何も起きなかった」で終わらせず、「このリスクをこう管理した結果、問題を防げた」という形で可視化して伝える
- 複数プロジェクトを横断した知見やノウハウを、属人化させずに資料として残し、組織への貢献として示す
成果を「待っていれば伝わる」ものと考えず、自分から発信していく姿勢が、発注側というわかりにくい成果を正当に評価してもらうために欠かせません。報告の頻度やタイミングも重要で、プロジェクトが終わった後にまとめて報告するよりも、節目ごとにこまめに共有しておく方が、周囲の記憶にも残りやすくなります。
長期的にはプロジェクトマネジメントの専門性として確立する
短期的な評価のわかりにくさはあるものの、長期的に見れば、発注側として複数のプロジェクトを成功させてきた実績は、プロジェクトマネジメントの専門性として社内外で確立していきます。単発の成果ではなく、積み重ねとして評価される性質のキャリアだと捉えておくことが重要です。
社内で評価されにくいと感じる時期があっても、焦って転職を考える前に、まずは自分の成果を可視化する工夫を試してみることをおすすめします。それでも評価の構造自体が変わらない場合は、発注側の経験はベンダー側からどう評価されるのかで触れたように、社外ではまったく異なる評価を受けられる可能性もあります。
まとめ
発注側担当者のキャリアは、成果が「問題が起きなかったこと」として表れるため、社内で評価されにくい構造があります。節目での報告、リスク管理の可視化、知見の形式知化を意識的に行うことで、この構造的な課題をある程度補うことができます。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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