WBSは「現場任せ」でいいのか?発注側が押さえるべき予定と実績の差分管理

WBSは「現場任せ」でいいのか?発注側が押さえるべき予定と実績の差分管理

はじめに

マスタスケジュールは発注側が握るべき理由では、発注側が持つべきスケジュール管理は月次粒度の全体感で十分だと書きました。一方で、「WBS(タスクを週次・日次レベルまで分解した詳細計画表)は現場・ベンダーに任せておけばいい」と考えている発注側担当者も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、WBSの中身をすべて発注側が追う必要はありませんが、WBSが持っている「予定と実績の差分」という情報だけは、発注側も押さえておくべきです。

SIerで4年半、ITコンサルファームで4年半、要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応してきた経験から、その理由を解説します。

マスタスケジュールだけでは遅延の「芽」に気づけない

マスタスケジュールは月次粒度のため、フェーズ内のタスクが多少前後しても、ガントチャート上の見た目はほとんど変わりません。これは全体感を把握する上ではメリットですが、裏を返すとフェーズの途中で発生している小さな遅延の積み重ねに気づきにくいという弱点でもあります。

小さな遅延は、放置すると雪だるま式に大きくなります。1つのタスクの2日の遅延が、後続タスクの着手を2日遅らせ、さらにその後続を遅らせ……という連鎖が、フェーズの終盤になって初めて「2週間遅れています」という形で表面化する、というのはよくあるパターンです。

この芽に早めに気づくために必要なのが、週次粒度でのWBS管理です。

予定と実績の差分を記録する

WBSを運用する上で最も重要なのは、「予定」と「実績」を分けて記録することです。予定開始日・予定終了日だけを管理し、実績日を記録しない運用をしているケースをよく見かけますが、これでは「計画通りに進んでいるか」を客観的に判断できません。

実績日を記録する運用にしておくと、「予定終了日は過ぎているが、実績終了日が記録されていない」というタスクが機械的に抽出できます。これが遅延の一次シグナルです。進捗報告の受け方でも触れた通り、「大丈夫です」という口頭報告だけに頼らず、予定と実績の差分という客観的なデータで確認する習慣をつけることをおすすめします。

状況を可視化し、定例会で使う

WBSは行数が多くなりがちで、1行ずつ確認していては時間がいくらあっても足りません。私が実務で重視しているのは、「期限切れタスクが何件あるか」「着手すべき時期を過ぎても手つかずのタスクが何件あるか」を、件数として即座に把握できる状態を作ることです。

個別のタスクの遅れを一つひとつ追いかけるのではなく、まず全体として危険な状態にあるタスクが何件あるかを把握し、そこから深掘りする、という順番で定例会を進めると、限られた時間で的確な意思決定ができます。状況が可視化されていなければ、どこから手をつけるべきかの判断すらできません。

運用ルールを決め、プロジェクトメンバーに徹底させる

ここまで紹介した「予定と実績の差分管理」も「状況の可視化」も、WBSが正しく更新され続けていることが大前提です。どれだけ優れた管理表を用意しても、一部のメンバーが実績日を記録せず、ステータスも更新しないままでは、期限切れ件数も開始日超過件数も実態より少なく表示され、かえって危険な状態を見逃すことになります。

これを防ぐには、WBSを使い始める前に、運用ルールを明文化し、プロジェクトメンバー全員に徹底させる必要があります。私が実務で決めていたのは、主に次のようなルールです。

  • 実績日は、着手・完了のタイミングでその都度入力する(まとめて後から入力しない)
  • 更新の締切タイミングを固定する(例:毎週金曜17時までに当週分を更新)
  • ステータスが「遅延」になったタスクは、備考欄に理由と対応方針を必ず書く
  • 更新が滞っているメンバーには、定例会の場で個別に確認する

発注側が最低限知っておくべきプロジェクト管理の「型」で触れた通り、ベンダーコントロールの基本は「決めたルールを平常時から徹底して運用し続けること」です。これはWBSの運用についても同じで、ルールを決めただけで満足し、徹底を怠ると、せっかくの仕組みが形骸化してしまいます。

まとめ

WBSの全タスクを発注側が管理する必要はありませんが、「予定と実績の差分がどれだけ発生しているか」という情報は、発注側としても定期的に確認すべきです。実績日を記録する運用を徹底し、期限切れ・着手遅れの件数を可視化した上で定例会に臨むことで、小さな遅延が大きな遅延に膨らむ前に手を打てるようになります。そして、これらすべては運用ルールを明文化し、プロジェクトメンバー全員に徹底させて初めて機能します。

実際に使っているWBSのテンプレートは、noteで配布しています。


執筆者プロフィール:SIerで4年半、ITコンサルファームで4年半、要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応。基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。

コメント

タイトルとURLをコピーしました