はじめに
リスク管理表の作り方と運用で、「リスク(まだ発生していない不確実な事象)」と「課題(すでに顕在化している問題)」は分けて管理すべきだと書きました。今回はその後者、課題管理表について解説します。
SIerで4年半、ITコンサルファームで4年半、要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応してきた経験から、課題管理表を形骸化させないためのポイントを解説します。
課題は「気づいた瞬間」に起票する
課題管理で一番多い失敗は、気づいてもすぐに起票せず、頭の中やチャットのやり取りだけで処理してしまうことです。小さな課題ほど「わざわざ表に書くほどでもない」と判断されがちですが、これが積み重なると、後から「言った言わない」のトラブルや、対応漏れの原因になります。
重要かどうかの判断は後からでもできます。まずは気づいた時点で起票し、重要度は改めて評価する、という順序を徹底することをおすすめします。
重要度の判断基準を事前に共有しておく
課題管理表でもう一つ重要なのが、重要度(優先度)の判断基準をメンバー間で揃えておくことです。「これくらい重要」という感覚は人によって大きくズレます。ある担当者は些細な表示崩れを「高」と判断し、別の担当者は業務が止まる不具合を「中」と判断する、ということが実際に起こります。
「このまま放置するとスケジュール・予算・品質に重大な影響が出るものは『高』」のように、基準を事前に文章化し、メンバー全員で共有しておくことで、重要度の判断がブレにくくなります。
「対応不要」も立派な意思決定として記録する
課題の中には、検討した結果「今回は対応しない」という結論に至るものもあります。ここで注意したいのは、対応しないという判断も、きちんと記録として残すことです。
「対応しない」と口頭で決めただけでは、後から「なぜあの課題は放置されたのか」と聞かれたときに説明できません。対応方針を「対応不要」として明記し、理由を備考欄に残しておけば、それ自体が意思決定の記録になります。
「確認するルール」と「起票するルール」を決めておく
ここまで紹介した運用は、すべて前提があります。それは、課題管理表を定期的に確認するルールが決まっていることです。どれだけ丁寧に起票・整理しても、誰も見ない表はただのメモ置き場になります。新たに定例会を設ける必要はなく、既存の週次定例会の冒頭で課題管理表を開いて議論する、という運用で十分です。重要なのは「いつ、誰が確認するか」を決めておくことです。
もう一つ見落とされがちなのが、起票するルールです。これを決めずに運用していると、定例会の場で初めて「実はこんな課題もあります」と口頭で次々に課題が出てくる、というパターンに陥りがちです。これでは課題管理表が形骸化しているのと同じで、会議がその場しのぎの課題出し大会になってしまいます。
「気づいた時点ですぐに起票する」「定例会の前日までに起票を済ませておく」といったルールを事前に決め、定例会はあくまですでに起票された課題を確認・議論する場として運用することをおすすめします。会議の場で初めて課題が出てくる状態が続いているなら、それは起票ルールが機能していないサインです。
まとめ
課題管理表は、起票して終わりではなく、起票してからが本番です。気づいた瞬間に記録し、重要度の基準をメンバー間で揃え、「対応しない」という判断も含めて記録を残す。そして、確認するルールと起票するルールの両方を事前に決めておく。これを徹底することで、課題管理表は単なるメモの集積ではなく、プロジェクトの意思決定を支える道具になります。
実際に使っている課題管理表のテンプレートは、noteで配布しています。
執筆者プロフィール:SIerで4年半、ITコンサルファームで4年半、要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応。基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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