はじめに
キャリアの軸に「発注側の経験」を持つことの強みでは、発注側経験の希少性について触れました。では、実際にベンダー側(SIerやITコンサルファーム)は、発注側経験者をどのように評価しているのでしょうか。採用・現場の両方の視点から見ていきます。
採用面接で評価されるポイント
ベンダー側の採用担当者が発注側経験者を見る際、特に注目するのは次のような点です。
- 発注側として、ベンダーとの間でどんな課題に直面し、どう対応してきたか(具体的なエピソード)
- 要件定義・ベンダー選定・プロジェクト管理など、どの工程をどこまで一人称で担ってきたか
- 発注側としての不満・教訓を、ベンダー側の立場でどう活かせると考えているか
単に「発注側にいました」という事実だけでなく、その経験から何を学び、ベンダー側の仕事にどう転用できるかを具体的に語れるかどうかが評価の分かれ目になります。「発注側にいたとき、ベンダーのこういう対応にストレスを感じた。だから自分はベンダー側に回ったら、同じことをしないようにしたい」という語り方は、採用担当者にとって非常にわかりやすく、説得力のあるアピールになります。
現場で評価される場面
採用後、実際の現場で発注側経験が評価される場面は数多くあります。クライアントへの提案時に「発注側はここで不安を感じやすい」という実感に基づいた説明ができること、進捗報告の作り方が発注側の知りたい情報を起点に組み立てられていること、炎上プロジェクトの火消しにおいて発注側の心理を理解した立ち回りができることなどです。
これらは、ベンダー側しか経験していない人には身につきにくい、発注側経験者ならではの強みです。特に炎上プロジェクトの場面では、発注側が何に怒り、何を求めているのかを肌感覚で理解していることが、事態の収拾を早める大きな要因になります。
評価されにくいケースもある
一方で、発注側経験がそのまま高く評価されるとは限りません。発注側としての経験が浅い、あるいは特定の限られた業務にしか関わっていなかった場合は、「発注側にいた」という事実だけでは差別化になりません。また、発注側の視点に偏りすぎて、ベンダー側のビジネス上の制約(収益性、リソース配分など)への理解が欠けていると、現場で軋轢を生むこともあります。
評価されるためには、発注側の経験の「幅」と「深さ」、そしてベンダー側の論理も理解しようとする姿勢の両方が求められます。面接の場でも、発注側時代の成功体験だけでなく、「発注側として至らなかった点」も含めて率直に語れると、自己認識の正確さという点でより高く評価される傾向があります。
まとめ
発注側の経験は、ベンダー側の採用・現場の両方で価値あるものとして評価されますが、それは経験の幅と深さ、そしてその経験から何を学んだかを具体的に語れるかどうかにかかっています。発注側の視点だけに偏らず、ベンダー側の論理も理解する姿勢が、評価を高める鍵になります。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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