「追加費用はかかりません」を鵜呑みにしないために

「追加費用はかかりません」を鵜呑みにしないために

はじめに

ベンダーとの商談の中で、「この金額で、追加費用は一切かかりません」と言われると、発注側としては安心してしまいがちです。しかし、この言葉をそのまま鵜呑みにしてしまい、後になって想定外の追加費用を請求されるケースを数多く見てきました。なぜこうしたことが起きるのか、発注側として何を確認すべきかを整理します。

なぜ「追加費用はかかりません」のはずが追加費用が発生するのか

ベンダーが「追加費用はかかりません」と言うとき、それは現時点で合意している要件・スコープの範囲内ではという条件付きであることがほとんどです。この前提を発注側が正しく理解していないと、プロジェクトが進む中で要件の解釈にズレが生じたときに、「それは当初の範囲外なので追加費用が発生します」と言われて初めて、話が違うと感じることになります。

ベンダー側に悪意があるケースばかりではありません。見積もり段階での認識のすり合わせが不十分だったために、双方が異なる前提で「追加費用はかからない」と理解していた、というケースも多く見られます。

発注側が確認すべき2つのポイント

「追加費用はかかりません」という言葉を聞いたときに、発注側が必ず確認すべきなのは次の2点です。

① 現在の見積もりに、どこまでが含まれているか

見積もり金額の対象範囲を、機能一覧や作業項目のレベルまで具体的に確認します。「要件定義から本番稼働まで」といった大まかな説明だけでなく、「画面は何画面分を想定しているか」「帳票は何種類分か」といった、後から認識のズレが生じやすい部分まで踏み込んで確認しておくことが重要です。

② どの程度のバッファが見積もりに積まれているか

優れたベンダーの見積もりには、ある程度の追加要件や仕様変更を見込んだバッファ(予備工数)が含まれていることが一般的です。このバッファが「どの程度の規模の変更まで」を想定して積まれているのかを確認しておくと、追加費用が発生する境界線が具体的に見えてきます。バッファの中身についてベンダーに聞くと、意外と明確な答えが返ってこないこともあり、その場合はベンダー側も厳密な前提を持たずに見積もっている可能性がある、というシグナルとして捉えることもできます。

確認した内容は、必ず文書に残す

口頭でのやり取りだけで確認を終わらせず、確認した範囲・前提は必ず見積書や契約書の付帯資料として文書に残しておくことをおすすめします。検収基準を曖昧にすると起きることでも触れたとおり、プロジェクトの終盤で「言った言わない」のトラブルになる根本原因の多くは、当初の合意内容が文書として残されていないことにあります。

まとめ

「追加費用はかかりません」という言葉は、あくまで現時点で合意している範囲内での話です。発注側としては、見積もりに何がどこまで含まれているか、どの程度の変更まで想定したバッファが積まれているかを具体的に確認し、その内容を文書として残しておくことが、後々の想定外のトラブルを防ぐために欠かせません。


執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。

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