はじめに
要望を伝えたときに、ベンダーから「それは難しいです」「できません」と言われ、そのまま引き下がってしまった経験はないでしょうか。発注側として、この「できません」をどう受け止め、どう切り返すべきかを整理します。
「できません」には複数の種類がある
ベンダーから「できません」と言われたとき、その背景には複数の異なる理由が隠れていることがあります。
- **技術的に本当に不可能**:既存システムの構造上、物理的に実現できない
- **技術的には可能だが、工数・コストが見合わない**:できないわけではないが、現実的な予算内では難しい
- **契約範囲外**:技術的には可能だが、今の契約・体制では対応しきれない
- **ベンダー側の経験不足・リスク回避**:やったことがない、あるいは失敗を避けたいために慎重な返答をしている
これらはまったく異なる状況であるにもかかわらず、どれも「できません」という同じ言葉で返ってくることがあります。発注側としては、この言葉をそのまま受け取るのではなく、どの種類の「できません」なのかを見極めることが重要です。
切り返すための3つの質問
「できません」と言われたときは、次のような質問を投げかけることで、背景を具体的に引き出すことができます。
「何が制約になっていますか」
技術的な制約なのか、コスト・工数の制約なのか、契約範囲の制約なのかを明確にしてもらいます。制約の種類がわかれば、発注側として何を調整すれば実現に近づけるかが見えてきます。
「条件を変えれば実現可能ですか」
予算を増やす、納期を延ばす、スコープを絞る——何らかの条件を変えれば実現できるのかを確認します。「絶対に無理」なのか、「今の条件では無理」なのかを切り分けることができます。
「他に実現方法はありますか」
要望した方法そのものが難しくても、別のアプローチであれば目的を達成できる場合があります。ベンダーに代替案を求めることで、「できません」で終わらせずに、目的の達成に向けた議論に進められます。
「できません」を鵜呑みにしないための事前準備
こうした切り返しを的確に行うためには、発注側自身がある程度の技術的な地力を持っておくことも重要です。発注側担当者に求められるのは、エンジニアスキルではないでも触れたとおり、プロジェクト全体を把握できる程度の技術知識があれば、「それは本当に技術的な制約なのか」をある程度自分でも判断できるようになります。
高圧的に反論する必要はない
ここで注意したいのは、「できません」への切り返しは、ベンダーを問い詰めるためのものではないということです。目的はあくまで、制約の正体を正しく理解し、実現に向けた建設的な議論をすることです。高圧的な態度で臨むと、ベンダー側も本音を話しづらくなり、かえって良い解決策が出てこなくなります。冷静に、事実を確認する姿勢で質問を重ねることが大切です。
まとめ
ベンダーからの「できません」には、技術的制約・コスト制約・契約範囲・経験不足など、複数の背景が隠れています。「何が制約か」「条件を変えれば可能か」「代替案はあるか」という質問で背景を具体的に引き出すことが、建設的な議論につなげるための切り返し方です。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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