はじめに
ベンダーとの関係は、単発のプロジェクトで終わることもあれば、何年にもわたって続くこともあります。長期的に信頼できるパートナーシップを築けているベンダーがいる会社と、毎回ベンダー選定からやり直している会社とでは、プロジェクトの成功確率や進めやすさに大きな差が生まれます。発注側として、長期的なパートナーシップを築くために何ができるのかを整理します。
短期的な「安さ」より、長期的な「信頼」を重視する
安すぎる見積もりが危険な理由でも触れたとおり、価格だけでベンダーを選ぶ姿勢は、短期的なコスト削減にはつながっても、長期的な信頼関係の構築にはつながりにくいものです。毎回最安値のベンダーに乗り換えていると、ベンダー側も「どうせ次は選ばれないかもしれない」という前提で動くようになり、長期的な視点での提案や改善が生まれにくくなります。
多少のコスト差があっても、過去のプロジェクトで信頼できる動きをしてくれたベンダーと継続的に付き合う方が、結果的にプロジェクト全体の生産性が高くなることは少なくありません。
ベンダーを「下請け」として扱わない
長期的なパートナーシップを築けている発注側に共通するのは、ベンダーを単なる作業の発注先としてではなく、プロジェクトを一緒に成功させる対等なパートナーとして扱っていることです。
一方的に指示を出すだけでなく、ベンダー側の提案や懸念に耳を傾け、必要な情報を積極的に共有する姿勢が、ベンダー側のモチベーションや当事者意識を高めます。発注側が「丸投げ」になってしまう組織構造の問題の裏返しとして、発注側がベンダーに対して誠実な情報共有・対等な関係構築を行うことが、良いパートナーシップの土台になります。
フィードバックを伝える習慣を持つ
良い仕事をしてくれたときに、それを言葉にして伝えることも重要です。問題が起きたときだけ連絡が来て、うまくいったときは何も言われない、という関係では、ベンダー側のモチベーションは維持しにくくなります。小さなことでも「助かりました」「良い提案でした」と伝える習慣が、長期的な関係の質に影響します。
同時に、改善してほしい点があれば、曖昧にせずきちんと伝えることも大切です。言いたいことを溜め込んで、ある日突然契約を打ち切るような対応は、ベンダー側にとっても不幸な結末になります。日頃からの率直なコミュニケーションが、健全な関係を長続きさせます。
契約の明確さと、関係性の柔軟さは両立する
長期的なパートナーシップというと、「何でも融通を利かせてもらう緩い関係」をイメージするかもしれませんが、実際にはむしろ逆です。保守・運用フェーズで揉めるベンダーとの関係で触れたように、契約や役割分担が明確であるほど、お互いに余計な気を遣わずに率直な関係を築けます。曖昧な関係は、一見柔軟に見えて、実際には不満や誤解の温床になりやすいものです。
まとめ
ベンダーと長期的なパートナーシップを築くには、短期的な価格だけで判断しないこと、ベンダーを対等なパートナーとして扱うこと、良い点も改善点も率直に伝える習慣を持つことが重要です。契約の明確さと関係性の良さは対立するものではなく、むしろ両立させることで初めて、長く付き合えるベンダーとの関係が築けます。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


コメント