はじめに
IT契約書で発注側が確認すべき3つのポイントでは支払い条件・検収・知的財産権について解説しましたが、もう一つ見落とされがちな重要条項があります。それが「契約不適合責任」です。聞き慣れない言葉に感じるかもしれませんが、納品後にトラブルが起きたときに発注側を守ってくれる、重要な条項です。
契約不適合責任とは何か
契約不適合責任とは、納品された成果物が、契約の内容(種類・品質・数量など)に適合していなかった場合に、ベンダーが負う責任のことです。以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、民法改正により「契約不適合責任」という呼び方に変わりました。
わかりやすく言えば、検収が完了した後になって、「実は契約通りの機能が実装されていなかった」「仕様書に書かれた性能が出ていなかった」といった不具合が見つかった場合に、ベンダーに対して修補や損害賠償を求められる根拠となる条項です。
なぜ検収後の話なのに重要なのか
検収基準を曖昧にすると起きることでは、検収の時点で合否を判断する重要性について解説しましたが、どれだけ丁寧に検収を行っても、検収時点では気づけない不具合(潜在的な不具合)が、本番運用が始まってから発覚することがあります。
契約不適合責任の条項がなければ、検収が完了した時点でベンダーの責任は果たされたことになり、後から見つかった不具合について、発注側が修正費用を自己負担しなければならなくなる可能性があります。この条項は、検収後の「見えなかったリスク」から発注側を守るためのものです。
発注側が確認すべき3つのポイント
契約書の中で、契約不適合責任の条項を確認する際は、次の3点に注目してください。
① 責任を負う期間
契約不適合責任には、通常、期間の定めがあります(検収後1年、など)。この期間が短すぎると、実際に不具合が発覚する前に権利が失効してしまう可能性があります。システムの性質上、どのくらいの期間は不具合の発覚リスクがあるかを考慮して、妥当な期間が設定されているかを確認します。
② 責任の範囲
修補(無償での修正)だけなのか、損害賠償(不具合によって生じた損害の補償)まで含まれるのかを確認します。ベンダー側はできるだけ責任範囲を限定しようとする傾向があるため、発注側としてどこまでの補償を求めるか、交渉の余地がないかを検討する価値があります。
③ 責任が免除される条件
発注側の指示に起因する不具合など、ベンダーの責任が免除される条件が明記されていることが一般的です。この免責条件が過度に広く設定されていないか(本来ベンダーが負うべき責任まで免責対象になっていないか)を確認しておく必要があります。
まとめ
契約不適合責任は、検収後に発覚した不具合から発注側を守るための重要な条項です。責任を負う期間、責任の範囲、免責条件の3点を契約書で具体的に確認しておくことが、本番運用が始まってから想定外の自己負担を強いられる事態を防ぐことにつながります。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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