基幹刷新で「現場の抵抗」が起きる本当の理由

基幹刷新で「現場の抵抗」が起きる本当の理由

はじめに

基幹システムの刷新プロジェクトを進める中で、現場の利用者から強い抵抗にあうことがあります。「新しいシステムは使いにくい」「今のままでいい」という声があがると、プロジェクト側は操作性の改善や追加の説明会で対応しようとしがちですが、それだけでは根本的な解決にならないことがほとんどです。現場の抵抗が起きる本当の理由を整理します。

「使いにくさ」は表面的な理由にすぎないことが多い

現場から「使いにくい」という声が上がると、UIの改善やマニュアルの充実で対応しようとするのが一般的な反応です。しかし、実際にヒアリングを重ねてみると、操作性そのものよりも別のところに不満の本質があるケースが多くあります。

  • 新しいやり方を覚えること自体への負担感(変化そのものへの抵抗)
  • 自分たちの意見が反映されないまま、システムが「上から降ってきた」という感覚
  • これまでのやり方で問題なく回っていたのに、なぜ変える必要があるのかが腹落ちしていない

「使いにくい」という言葉の裏には、こうした感情的な要因が隠れていることが少なくありません。

現場の抵抗は、巻き込みの不足から生まれる

現場の抵抗が強いプロジェクトに共通するのは、要件定義や設計の段階で、実際にシステムを使う現場の担当者が十分に巻き込まれていなかったということです。情報システム部門や経営層が主導して要件を決め、現場には「こう決まりました」という形で一方的に通知される進め方では、現場からすると「自分たちのシステムではない」という感覚が強くなります。

基幹刷新プロジェクトにおける経営層の関わり方でも触れていますが、経営層の関与と現場の巻き込みは別のレイヤーの話です。経営層の承認を得ているからといって、現場の納得が得られているとは限りません。

業務プロセスの変更を伴う場合は、特に抵抗が強くなる

システムの刷新が、単なる画面の入れ替えではなく、業務プロセスそのものの変更を伴う場合、現場の抵抗はさらに強くなります。基幹システム刷新とBPR(業務プロセス改革)の関係でも触れているとおり、「システムが変わる」ことと「仕事のやり方が変わる」ことは、現場にとって心理的な負担の大きさが全く異なります。業務プロセスの変更を伴う場合は、システムの説明だけでなく、なぜそのプロセスに変える必要があるのかという背景の説明により多くの時間を割く必要があります。

現場の抵抗を和らげるためにできること

  • 要件定義の早い段階から、現場の代表者をプロジェクトメンバーとして正式に巻き込む(説明を受けるだけの立場ではなく、意見を出せる立場にする)
  • 「なぜ変えるのか」という目的を、繰り返し丁寧に伝える。1回の説明会で終わらせず、複数回にわたって対話の機会を設ける
  • 現場から上がった懸念・要望に対して、採用できないものについても「なぜ採用しないのか」まで含めて誠実に回答する

抵抗を完全になくすことは難しいとしても、プロセスの透明性を高め、現場が「自分たちも関わって作ったシステムだ」と感じられる状態を作ることが、最も効果的な対策です。

まとめ

基幹刷新で起きる現場の抵抗は、操作性の問題というより、要件定義段階での巻き込み不足と、変化の目的が十分に伝わっていないことに起因することが多いです。現場を早い段階から正式なメンバーとして巻き込み、変更の目的を丁寧に繰り返し伝えることが、抵抗を和らげる最も実効性のあるアプローチです。


執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。

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