はじめに
基幹システムの刷新は、システムの入れ替えだけで完結する話ではありません。本当に効果を出すためには、業務プロセスそのものを見直すBPR(Business Process Re-engineering/業務プロセス改革)とセットで進める必要があります。しかし、現実には「今のやり方をそのままシステムに移植する」という進め方に陥りがちです。基幹刷新とBPRの関係を整理します。
「現行踏襲」がもたらす本当の問題
基幹刷新プロジェクトでは、関係者の合意を得やすいという理由から、「現行の業務プロセスをそのままシステムに踏襲する」という方針が採られることがよくあります。これは一見、リスクの少ない堅実な進め方に見えますが、実際には大きな問題をはらんでいます。
現行の業務プロセスの中には、過去の個別事情への対応として積み重なった、非効率な手順や、もはや理由が失われた慣習的な作業が含まれていることが少なくありません。これらをそのままシステムに移植してしまうと、新しいシステムに、古い業務プロセスの非効率さをそのまま引き継いでしまうことになります。せっかく多額の投資をして基幹刷新を行っても、業務の効率化という本来の目的が達成されないまま終わってしまうのです。
BPRを伴わない刷新が起きる理由
BPRを伴わない「現行踏襲」の刷新が起きる背景には、次のような事情があります。
- 業務プロセスの見直しには、現場との丁寧な合意形成が必要で、時間と労力がかかる
- 業務プロセスを変えることへの現場の抵抗が強く、摩擦を避けるために現状維持を選んでしまう
- そもそも「現行踏襲」の方が要件定義がシンプルで、スケジュールを守りやすい
こうした事情は理解できる一方、長期的に見れば、BPRを伴わない刷新は投資対効果の低いプロジェクトになりがちです。
BPRと基幹刷新を同時に進めるための進め方
① 「なぜこの業務プロセスになっているのか」を問い直すフェーズを設ける
現行把握の段階で、単に「何をやっているか」を洗い出すだけでなく、「なぜそのやり方になっているのか」を問い直すフェーズを明確に設けます。理由が既に失われている慣習的な作業は、BPRの対象として見直しの候補にします。
② 業務プロセスの見直しと、現場の巻き込みをセットで進める
業務プロセスの変更は、基幹刷新で「現場の抵抗」が起きる本当の理由で触れたとおり、現場にとって心理的な負担が大きいものです。BPRを進める際は、現場を単なる説明対象としてではなく、見直しの検討メンバーとして巻き込むことで、納得感を高めながら進めることができます。
③ システム要件とBPRを行き来しながら検討する
BPRを先に完全に終えてからシステム要件を決めるのではなく、システムでできること・できないことを踏まえながら、業務プロセスの見直し案を調整していく、という往復的な進め方が現実的です。システムの制約を無視したBPRは、結局実現できずに絵に描いた餅になってしまいます。
まとめ
基幹システム刷新を「現行踏襲」のまま進めてしまうと、古い業務プロセスの非効率さを新しいシステムにそのまま引き継ぐことになり、投資対効果が低くなります。現行把握の段階で業務プロセスの理由を問い直し、現場を巻き込みながらBPRとシステム要件検討を並行して進めることが、基幹刷新の効果を最大化するためのポイントです。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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