基幹刷新プロジェクトにおける経営層の関わり方

基幹刷新プロジェクトにおける経営層の関わり方

はじめに

基幹システム刷新プロジェクトの成否は、経営層の関わり方に大きく左右されます。しかし、「経営層の関わり方」と一言でいっても、細部に口を出しすぎるのも、逆に丸投げにしてしまうのも、どちらもプロジェクトにとって望ましくありません。経営層がどこまで、どのように関わるべきかを整理します。

経営層の関与が薄すぎる場合に起きること

経営層がプロジェクトの初期承認だけ行い、その後は現場任せにしてしまうケースでは、次のような問題が起きやすくなります。

部門間で意見が対立した際に、誰も最終判断を下せず、議論が堂々巡りになる。予算や納期に影響する大きな判断が必要な局面で、経営層の判断を仰ぐまでに時間がかかり、プロジェクト全体が停滞する。基幹刷新で「現場の抵抗」が起きる本当の理由で触れたように、現場からは「経営層は本気でこのプロジェクトをやる気があるのか」という不信感が生まれ、協力が得られにくくなる——といった事態です。

経営層の関与が細かすぎる場合に起きること

一方で、経営層が実務の細部にまで口を出しすぎるケースも問題です。現場の意思決定が遅くなる、プロジェクトチームが経営層の顔色をうかがいながら動くようになり主体性が失われる、専門的な技術判断に経営層の限られた知見で介入してしまい、かえって誤った方向に進んでしまう、といった弊害が生じます。

経営層が関わるべき3つの局面

経営層が重点的に関わるべきなのは、次の3つの局面です。

① プロジェクトの目的・ゴールの設定

「何のためにこの刷新を行うのか」という目的は、経営層が自ら言語化し、プロジェクトチームと現場全体に繰り返し発信する必要があります。プロジェクト計画書は「誰のための文書」なのかで触れているとおり、プロジェクト計画書は経営層の意思表明としての役割も持っており、形だけのキックオフ資料にしないためには経営層自身の関与が不可欠です。

プロジェクト計画書のテンプレートは、noteで配布しています。経営層が目的を言語化し、プロジェクト全体に発信するための土台として活用いただけます。

② 部門間の対立を解消する最終判断

部門間の利害が対立する場面(業務プロセスの変更範囲、優先順位の調整など)では、現場レベルでの合意形成が難しいことが多く、経営層が最終判断者として意思決定する必要があります。この際、判断の基準やプロセスが不透明だと現場の納得感を損なうため、判断の根拠を明確に示すことが重要です。

③ 定期的な進捗確認と、必要なリソースの確保

経営層が定期的(月次など)にプロジェクトの進捗を確認し、遅延や問題が発生している場合には、必要な人員・予算の追加投入を迅速に判断することが求められます。進捗確認の場を形骸化させず、現場からの率直な報告が上がってくる関係性を維持することが重要です。

経営層が関わらなくてよい領域を明確にする

経営層の関与を適切な範囲にとどめるためには、逆に「経営層が判断しなくてよい領域」をプロジェクトチームと事前にすり合わせておくことも有効です。技術的な実装方法の選定や、画面デザインの細部といった専門領域は、プロジェクトチームに権限を委譲し、経営層は前述の3つの局面に集中することで、双方にとって健全な関わり方が実現できます。

まとめ

経営層の関わり方は、関与が薄すぎても細かすぎてもプロジェクトに悪影響を及ぼします。目的・ゴールの設定、部門間対立の最終判断、定期的な進捗確認とリソース確保という3つの局面に集中して関わり、それ以外の専門領域はプロジェクトチームに委ねることが、バランスの取れた経営層の関わり方です。


執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。

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