基幹刷新の予算超過はなぜ起きるのか|発注側が見落としがちなコスト

基幹刷新の予算超過はなぜ起きるのか|発注側が見落としがちなコスト

はじめに

基幹システム刷新プロジェクトは、当初の見積もりから予算が膨らんでしまうケースが少なくありません。「ベンダーの見積もりが甘かった」と考えがちですが、実際には発注側が見落としていたコスト項目が後から発覚し、追加費用につながっているケースも多くあります。予算超過が起きる典型的な原因を整理します。

見積もりの段階で見落とされやすいコスト

基幹刷新プロジェクトの見積もりは、開発・構築費用を中心に組まれることが多く、次のようなコストが見積もりの対象から漏れがちです。

① データ移行コスト

マスタデータ整備を後回しにするとどうなるかでも触れたとおり、データの重複・不整合の整理や、コード体系の変換作業は、想定以上に工数がかかることが珍しくありません。見積もり段階では「データ移行一式」としてざっくり計上されていることが多く、実態との乖離が起きやすい項目です。

② 教育・トレーニングコスト

新システムの操作研修、マニュアルの整備、現場からの問い合わせ対応のための体制構築など、利用者側のコストは見積もりに含まれていないことがあります。基幹刷新の本当のゴールは「稼働」ではなく「定着」でも触れているように、定着のためにはこうしたコストを軽視できません。

③ 並行稼働期間のコスト

新旧システムを並行稼働させる期間は、二重運用による業務負荷増大や、旧システムの保守費用が継続して発生します。新旧システムの並行稼働、いつまで続けるべきかでも触れたとおり、この期間が長引くほどコストも積み上がっていきます。

④ テスト・受け入れ検証のコスト

テスト計画の立て方|品質を担保する3つの観点で触れた非機能面・データ移行面のテストは、開発ベンダー任せにできない部分が多く、発注側の業務部門の工数として見積もりに織り込まれていないことがあります。

「見積もりが甘い」のではなく「前提が曖昧」なことが多い

予算超過の原因を突き詰めると、ベンダーの見積もり精度の問題というより、発注側が見積もり依頼時に提示した前提条件が曖昧だったことに起因するケースが多く見られます。現行システムの規模感、データ量、移行対象範囲が正確に伝わっていなければ、ベンダー側もそれを前提に見積もりを組まざるを得ません。安すぎる見積もりが危険な理由でも触れたとおり、前提条件が曖昧な見積もりは、額面通りに信頼することができません。

予算超過を防ぐためにできること

  • 見積もり依頼の段階で、データ移行・教育・並行稼働・テストの各コストが見積もりに含まれているかを明示的に確認する
  • 現行システムの規模感・データ量について、できるだけ正確な情報をベンダーに提供する
  • 全体予算に、想定外の事態に備えた一定のバッファ(コンティンジェンシー)をあらかじめ組み込んでおく

マスタスケジュールと予算を一元管理できるテンプレートは、noteで配布しています。コスト項目ごとの進捗を可視化しておくことで、予算超過の兆候に早めに気づきやすくなります。

まとめ

基幹刷新の予算超過は、データ移行・教育・並行稼働・テストといった、見積もり段階で見落とされがちなコスト項目に起因することが多くあります。これらは「ベンダーの見積もりが甘い」というより、発注側が提示する前提条件の精度に左右される部分が大きく、見積もり依頼時にこれらの項目が織り込まれているかを確認することが、予算超過を防ぐ第一歩になります。


執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。

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