レガシーシステムの保守担当者が高齢化・退職するリスクへの備え

レガシーシステムの保守担当者が高齢化・退職するリスクへの備え

はじめに

長年運用されてきた基幹システムほど、その保守を支えているのは特定のベテラン担当者であることが多くあります。しかし、その担当者が高齢化し、退職の時期が近づいているにもかかわらず、組織として十分な備えができていないケースは少なくありません。このリスクにどう向き合うべきかを整理します。

なぜこのリスクが見過ごされやすいのか

ベテラン担当者が現役で活躍している間は、システムは問題なく動き続けます。「今のところ問題は起きていない」という状態が続くと、このリスクへの対応は優先順位が下がり、他の緊急度の高い課題に押しやられがちです。しかし、退職というイベントは、業務上の問題が顕在化してから動き出すのでは遅く、事前に準備しておく必要がある典型的なリスクです。

これは、ベンダーのキーマンが離任・退職したときに発注側がすべきことで触れた、外部ベンダーのキーマン離任のリスクと本質的に同じ構造を持っています。違いは、相手が社内の人材であるため「いつかちゃんと引き継ぎをしよう」という先延ばしが起きやすいという点です。

退職してから発覚する問題

対策を取らないまま担当者が退職してしまうと、多くの場合、次のような問題が発覚します。

  • 現行システムの「ブラックボックス化」を防ぐにはで触れたような、設計書に残っていない暗黙知が完全に失われる
  • 障害が発生した際に、原因の特定にこれまでの何倍もの時間がかかるようになる
  • ちょっとした仕様変更すら、影響範囲が把握できず対応に踏み切れなくなる

これらの問題は、基幹刷新プロジェクトそのものにも直結します。退職した担当者の知識がないまま現行把握を進めようとすると、要件定義の精度が大きく下がってしまいます。

リスクへの備え方

① 退職予定の有無にかかわらず、知識の文書化を進める

「まだ退職予定はないから大丈夫」ではなく、高齢化が進んでいる担当者がいる場合は、退職の時期が確定していなくても文書化を早期に始めるべきです。知識は、担当者本人が元気で協力的なうちにしか正確に引き出せません。

② ヒアリング形式で知識を引き出す

いきなり「マニュアルを作ってください」と依頼しても、ベテラン担当者にとっては何から書けばよいかわからず、作業が進まないことが多いです。第三者(情報システム部門やプロジェクトメンバー)が定期的にヒアリングを行い、対話形式で知識を引き出しながら文書化していく方が、実効性が高くなります。

③ 後継者を早期に育成し、並走期間を確保する

退職直前に後継者を決めるのではなく、できるだけ早い段階で後継者候補を決め、一定期間の並走(OJT)を確保することが理想的です。文書だけでは引き継げない判断の勘所は、実際に一緒に業務にあたる中でしか伝わらないことが多いためです。

④ 基幹刷新プロジェクトの計画に、このリスクを織り込む

基幹刷新プロジェクトを計画する際は、現行システムの保守担当者の年齢構成・退職予定を把握し、プロジェクトのスケジュールにこのリスクを織り込んでおくことをおすすめします。退職が迫っている場合は、現行把握のフェーズを優先度高く、早期に設定する必要があります。

まとめ

レガシーシステムの保守担当者の高齢化・退職リスクは、問題が顕在化してから動くのでは手遅れになりやすいリスクです。担当者が元気なうちに知識の文書化とヒアリングを進め、後継者の早期育成と並走期間の確保を計画的に進めることが、基幹刷新プロジェクトを含めた将来のリスクに備えるための重要なポイントです。


執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。

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