はじめに
プロジェクトを支えてくれていたベンダー側の担当者(キーマン)が、突然の異動や退職でプロジェクトを離れる——この事態は、発注側にとって大きなリスクです。キーマンが持っていた暗黙知や経緯の理解が失われ、プロジェクトの品質やスピードが急に落ちてしまうことも珍しくありません。実際にこうした場面に直面した経験から、発注側が取るべき対応を整理します。
なぜキーマンの離任がプロジェクトに打撃を与えるのか
どんなに契約や設計書が整備されていても、プロジェクトには文書化しきれない「暗黙知」が必ず存在します。過去の経緯、なぜその仕様になったのかという背景、関係者との力関係——こうした情報の多くは、キーマン個人の頭の中にしか残っていません。
キーマンが離任すると、この暗黙知が一気に失われます。後任者がどれだけ優秀であっても、ゼロから情報をキャッチアップする時間が必要になり、プロジェクトの進行に遅れが生じます。発注側としては、この遅れを前提に対応を考えておく必要があります。
発注側がまず確認すべきこと:引き継ぎの中身
キーマンの離任が発覚したら、発注側が最初にやるべきことは、引き継ぎが細かい部分まで行われているかを確認することです。単に「引き継ぎは完了しました」というベンダー側の報告を鵜呑みにせず、具体的な中身を確認する必要があります。
- 現在対応中の課題・懸念事項が、漏れなく後任者に共有されているか
- 過去の意思決定の経緯(なぜその仕様・その進め方になったのか)が記録として残され、引き継がれているか
- 発注側との間で交わされた、まだ正式な議事録になっていないような細かい口頭合意まで共有されているか
引き継ぎ資料を作成してもらうだけでなく、できれば発注側も同席する引き継ぎミーティングの場を設け、その場で抜け漏れがないかを直接確認することをおすすめします。
後任者の経歴・スキルを確認し、必要なら交代を依頼する
引き継ぎの中身の確認と合わせて重要なのが、後任者の経歴やスキルが、プロジェクトの要求水準に見合っているかを確認することです。ベンダー側の都合で、経験の浅いメンバーが後任として配置されるケースもあります。
後任者のスキルセットや類似プロジェクトでの経験を具体的に確認し、プロジェクトを任せるにあたって不足があると感じる場合は、遠慮せずにベンダー側に交代を依頼することも検討すべきです。発注側には、契約に基づいて適切な体制でプロジェクトを遂行してもらう権利があります。「せっかく来てもらったから」と妥協してしまうと、後々のプロジェクト品質に響いてきます。
日頃からできる備え
キーマン離任のリスクを完全にゼロにすることはできませんが、日頃から備えることで影響を小さくできます。重要な意思決定や合意事項は、口頭だけで終わらせず、必ず議事録やメールで記録に残す習慣をつけておくことです。また、プロジェクトの重要な情報がキーマン一人に依存していないか、ベンダー側のチーム体制そのものにも目を配っておくと、いざというときの被害を抑えられます。
まとめ
ベンダーのキーマンが離任する際は、引き継ぎが細かい部分まで行われているかを具体的に確認し、後任者の経歴・スキルに不足があれば交代を依頼することが重要です。日頃から重要事項を記録に残す習慣をつけておくことも、こうしたリスクへの備えになります。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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