はじめに
一つの組織の中で複数のプロジェクトが同時並行で動いていると、限られた人員・予算をどのプロジェクトに優先的に配分するかという「リソースの綱引き」が必ず発生します。この調整は、個々のプロジェクトマネージャーの立場では解決できず、PMOが組織横断的な視点で担うべき役割です。優先順位づけの考え方を整理します。
なぜリソースの綱引きが起きるのか
複数のプロジェクトが同時に走っていると、それぞれのプロジェクトマネージャーは、自分が担当するプロジェクトの成功を最優先に考えます。これは当然のことですが、組織全体で見ると、優秀な人材や限られた予算を複数のプロジェクトが同時に取り合う状態になります。
各プロジェクトマネージャーの立場からの主張だけを聞いていると、「どのプロジェクトも最優先」という収拾のつかない状態に陥ります。組織全体の視点で優先順位を判断する機能が必要になるのは、このためです。
優先順位づけの評価軸
PMOが複数プロジェクトの優先順位を判断する際は、個々のプロジェクトの重要性を主観的に比較するのではなく、次のような評価軸を用いて、できるだけ客観的に評価することが重要です。
- 経営戦略との整合性:経営層が掲げる重点方針に、どれだけ直結しているか
- 投資対効果:投じるコストに対して、どれだけの効果(売上・コスト削減・リスク低減など)が見込めるか
- 緊急性:法改正対応など、先送りできない制約があるか
- 実現可能性:必要なリソース・技術的な実現性が、現時点でどの程度見込めるか
これらの評価軸にもとづいて各プロジェクトをスコアリングし、優先順位を可視化することで、「声の大きいプロジェクトが優先される」という属人的な調整を避けられます。
リソースが競合した際の調整の進め方
優先順位が明確になっていても、実際にリソースが競合する局面では、調整が必要になります。この際、PMOが意識すべきなのは、当事者同士の交渉に任せず、組織としての判断を示すことです。
プロジェクトマネージャー同士の交渉に委ねてしまうと、交渉力や声の大きさによって結果が左右され、必ずしも組織にとって最適な配分にはなりません。PMOが優先順位の評価軸にもとづいて判断を示し、必要であれば経営層を巻き込んで最終決定することで、公平性を担保します。
優先順位は固定ではなく、定期的に見直す
プロジェクトの優先順位は、一度決めたら固定するのではなく、経営環境の変化や各プロジェクトの進捗状況に応じて、定期的(四半期ごとなど)に見直すことをおすすめします。見直しのタイミングを事前に決めておくことで、優先順位の変更が場当たり的にならず、組織として一貫性のある判断を続けられます。
まとめ
複数プロジェクトのリソースの綱引きは、個々のプロジェクトマネージャーの立場では解決できず、PMOが組織横断的な視点で調整すべき役割です。経営戦略との整合性・投資対効果・緊急性・実現可能性といった評価軸で優先順位を可視化し、当事者同士の交渉に任せず組織としての判断を示すことが、公平で納得感のあるリソース配分につながります。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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