はじめに
情シス部門の役割が、現場からの要望を聞いてベンダーに依頼するだけの「御用聞き」になってしまっている、という悩みをよく聞きます。これは個人の能力の問題というより、立ち位置の問題であることが多いです。どうすれば御用聞きから抜け出せるのか、考え方を整理します。
「言われたことをやる」から「言われる前に動く」へ
御用聞きになってしまう情シスの多くは、現場から要望が来てから動き始めます。この順番だと、常に受け身の立場になり、要望の背景や本当の課題を深く理解する時間的余裕がありません。要望が来た時点ですでに現場は「これが解決策だ」と思い込んでいることが多く、情シスはその解決策の実現可否だけを検討する立場に追いやられてしまいます。
これを変えるには、現場から要望が来るのを待つのではなく、情シス側から定期的に現場の業務状況をヒアリングし、課題を先回りして拾いに行く動き方への転換が必要です。なぜ発注側はITプロジェクトで損をするのかで触れた情報の非対称性は、情シスが受け身であるほど広がりやすくなります。定期的なヒアリングの場を自分から設定し、「最近困っていることはないか」を能動的に聞きに行くだけでも、立ち位置は大きく変わります。
「要望」をそのまま受けず、「課題」に変換する
現場から来る要望の多くは、「こういうシステムが欲しい」という解決策の形で来ます。しかし、その要望の背景には、本当の課題が別にあることが多いです。要望をそのまま右から左にベンダーへ流すのではなく、「なぜその要望が出てきたのか」を一段掘り下げて確認する習慣が、御用聞きから抜け出す第一歩になります。
例えば「新しいシステムを入れてほしい」という要望の裏には、「今のシステムの画面遷移が多すぎて時間がかかる」という具体的な課題が隠れていることがあります。この場合、新システムの導入ではなく、既存システムの運用ルール変更や簡易な改修だけで解決できる可能性もあります。要望をそのまま受け入れる前に、一度「なぜ」を聞く癖をつけることが重要です。
ベンダーとの関係を「下請け化」させない
御用聞きの情シスは、ベンダーに対しても「言われたことをそのまま発注する」関係になりがちです。これでは、ベンダーからの提案を評価する目が育ちません。ベンダー交渉で主導権を握る方法で触れたような、対等な立場での会話を意識することが、御用聞きの構造から抜け出すために欠かせません。
小さな実績を積み重ねて信頼を得る
御用聞きからの脱却は、一朝一夕には進みません。まずは小さな案件で、要望の背景を掘り下げて課題解決型の提案を行い、成果を出すことから始めるのが現実的です。小さな成功体験の積み重ねが、情シスに対する社内の見方を変え、より上流の相談が持ち込まれるようになるきっかけになります。周囲の見方が変わり始めると、現場側から「これも一緒に考えてほしい」という相談が自然と増えていき、御用聞きの構造そのものが徐々に解消されていきます。
まとめ
情シスが御用聞きで終わらないためには、現場からの要望を待つのではなく先回りして拾いに行くこと、要望をそのまま受けずに本当の課題に変換すること、ベンダーとの関係を下請け化させないことが重要です。小さな成功体験の積み重ねが、情シスの立ち位置そのものを変えていきます。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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