はじめに
発注側担当者のキャリアパスは社内でどう評価されるかで触れたとおり、発注側の成果は社内で評価されにくい構造があります。この構造の中で、「この人に相談すれば間違いない」と社内で認知されるポジションを築くために、意識してきたことを紹介します。
「頼まれる前」に情報発信する
社内での認知を高めるために効果的だったのは、依頼を待つのではなく、自分から情報を発信することです。ベンダーとのやり取りで得た気づき、プロジェクトで直面した課題とその対処法を、定例会や社内資料の形でこまめに共有していました。
「困ったときに相談する相手」として認知されるには、その前段階で「この人は頼りになりそうだ」という印象を積み重ねておく必要があります。発信は、その印象づくりの土台になります。社内の勉強会や朝会のような小さな場であっても、定期的に顔を出して自分の知見を話すことで、「ITのことを発信している人」という認識が少しずつ広がっていきます。
小さな相談にも丁寧に対応する
大きな案件だけでなく、他部署からの小さな相談(「このツール導入ってどう思いますか」程度の軽い質問)にも、丁寧に対応することを意識していました。小さな相談への対応の質が、次の相談のハードルを下げ、徐々に「ITのことはこの人に聞けばいい」という認識が社内に広がっていきます。
忙しいときほど、小さな相談を後回しにしたり、素っ気ない対応をしてしまいがちですが、ここでの対応の差が、長期的な社内での信頼に大きく影響します。
失敗事例も含めて「学び」として共有する
成功事例だけでなく、うまくいかなかったプロジェクトの反省点も、隠さずに共有するようにしていました。失敗を正直に語れる人は、周囲から「誠実で信頼できる」という印象を持たれやすく、結果として相談されやすい存在になります。失敗を見せないようにする人より、失敗から何を学んだかを語れる人の方が、長期的には信頼を得やすいというのが実感です。
特に、自分の判断ミスを隠さずに共有することは勇気がいりますが、「この人は都合の悪いことも含めて正直に話してくれる」という評判は、一度築けると簡単には崩れない強固な信頼になります。
ベンダーとの関係性も社内での評価につながる
ベンダーとの良好な関係を築き、無理のない範囲で協力を引き出せる担当者は、社内からも「あの人が窓口だと物事がスムーズに進む」という評価を得やすくなります。ベンダーとの折衝力は、対外的な能力であると同時に、社内評価にも直結する能力です。
認知が広がった後に意識したこと
社内での認知が広がり、相談が増えてくると、今度はすべてに対応しきれなくなるという別の課題が出てきます。その段階では、自分一人で抱え込まず、ナレッジを資料化して誰でも参照できるようにする、信頼できる後輩に一部の相談対応を任せるなど、自分がボトルネックにならない仕組みづくりを意識するようになりました。認知される段階と、その認知をどう組織の資産に変えていくかは、分けて考える必要があります。
まとめ
社内で「発注側のプロ」として認知されるためには、頼まれる前の情報発信、小さな相談への丁寧な対応、失敗も含めた正直な共有、ベンダーとの良好な関係構築の積み重ねが重要です。これらは一朝一夕では築けませんが、地道な積み重ねが、社内での信頼というかたちで確実に返ってきます。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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