はじめに
生成AIが普及したことで、システム開発・導入のベンダー選定にも変化が生まれています。一方で、ベンダー選定の本質的な考え方は変わっていない部分も多くあります。何が変わり、何が変わっていないのかを整理します。
変わったこと:開発スピード・コストの前提
パッケージ導入かフルスクラッチか?AI時代に判断すべき3つの視点でも触れたとおり、AIによるシステム開発の普及によって、フルスクラッチ開発の最大の弱点だった「開発コスト・期間」が、以前より圧縮できるようになってきています。この変化により、ベンダー選定における判断軸にも影響が出ています。
- 以前はコスト面で選択肢になりにくかったフルスクラッチ開発が、AI活用によって現実的な選択肢になりつつある
- ベンダーの提案内容に「AIをどう活用して開発効率を上げるか」という観点が加わるようになった
- 見積もりの前提(工数の算出根拠)が、AI活用を踏まえたものかどうかで、ベンダーごとに差が出やすくなっている
変わったこと:ベンダーに求められるスキルセット
AI活用を前提とした開発が広がる中で、ベンダー側に求められるスキルセットにも変化が出ています。従来の実装スキルに加えて、AIが生成したコードを適切にレビュー・修正できる力が、ベンダーの実力を見極める新しい観点になっています。
AIにコードを書かせるだけであれば、専門知識がなくても一定レベルのものは作れるようになりつつあります。だからこそ、「AIの出力を評価し、品質を担保できる人材がいるか」が、ベンダーの提案力・実行力を見極める上で、以前よりも重要な観点になっています。
変わらないこと:要件定義の重要性
AIが開発スピードを上げてくれるとしても、「何を作るべきか」を正しく定義する力の重要性は変わりません。 要件を固めずにベンダーに相談すると、何が起きるかで触れたとおり、要件が曖昧なままでは、AIを使おうが使うまいが、プロジェクトは迷走します。むしろ開発スピードが上がった分、曖昧な要件のまま着手してしまうリスクはこれまで以上に高まっているとも言えます。
変わらないこと:ベンダーを見極める基本的な視点
ベンダー選定でコンペを実施する際、評価基準をどう作るかで触れた、価格だけで判断しない姿勢、提案内容の具体性を見極める視点、実績・体制を確認する重要性は、AI時代になっても変わりません。AIを活用した開発を謳うベンダーであっても、提案の中身が自社の課題に即しているか、実行体制が妥当かという基本的な見極めは、従来と同様に必要です。
発注側が意識すべきこと
AI活用を前提としたベンダーの提案を受ける際は、次の点を確認することをおすすめします。
- AI活用によって、具体的にどの工程のスピード・コストが、どの程度圧縮されるのか
- AIが生成した成果物のレビュー・品質担保の体制がどうなっているか
- AI活用によるコスト削減分が、見積もりに適切に反映されているか
「AIを使っているから安心」「AIを使っているから安い」という表面的な説明だけでなく、具体的にどう活用し、どう品質を担保しているのかまで踏み込んで確認することが重要です。
まとめ
生成AI時代のベンダー選定では、開発スピード・コストの前提や、ベンダーに求められるスキルセットに変化が生まれています。一方で、要件定義の重要性や、価格だけで判断しないベンダーの見極め方といった基本的な考え方は変わっていません。AI活用の表面的な謳い文句にとどまらず、具体的な活用方法・品質担保の体制まで確認することが重要です。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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