はじめに
プロジェクトマネジメントというと、発注側とベンダーの間の交渉や調整に目が向きがちですが、実際には自社内のチームメンバー同士のコンフリクト(対立・衝突)への対応も、プロジェクトマネージャーの重要な役割です。チーム内のコンフリクトにどう介入すべきかを整理します。
チーム内コンフリクトが起きやすい場面
プロジェクトチーム内のコンフリクトは、次のような場面で起きやすくなります。
- 業務部門とIT部門の対立を防ぐプロジェクト体制の作り方で触れたような、部門間での優先順位・評価軸の違いによる対立
- タスクの役割分担が曖昧なまま進み、「誰の仕事か」をめぐる押し付け合いが発生する
- スケジュールの遅延が重なり、責任の所在をめぐって関係者同士がぎくしゃくする
- 意見の相違が、個人的な感情の対立にまで発展してしまう
これらを放置すると、チームの協力関係が崩れ、プロジェクト全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。
コンフリクトへの5つの対応スタイル
プロジェクトマネジメントの分野では、コンフリクトへの対応スタイルとして、次の5つが整理されています。状況に応じて使い分ける視点を持っておくことが重要です。
- 協調(コラボレーション):双方の意見を統合し、両者が満足できる解決策を探る。時間はかかるが、最も建設的な解決につながりやすい
- 妥協:双方が一部譲歩し、折衷案で合意する。時間的制約がある場合に有効
- 強制:一方の意見を押し通す。緊急性が高く、迅速な決定が必要な場面でのみ有効
- 鎮静(スムージング):対立の表面化を避け、共通点を強調してその場を収める。一時的な対応にとどまりやすい
- 回避:対立そのものを先送りする。根本解決にはならないが、一時的な感情の高ぶりを冷ますためには有効な場合もある
PMとして重要なのは、どのスタイルが優れているかではなく、状況に応じてこれらを使い分けることです。緊急時には強制が必要な場面もありますが、重要な論点については、できる限り協調のスタイルで時間をかけて解決することが望ましいです。
PMが介入するタイミング
すべてのコンフリクトにPMが介入する必要はありません。メンバー同士で自然に解決できる軽微な意見の相違まで逐一介入すると、かえってメンバーの自律性を損ないます。
PMが介入すべきタイミングの目安は、コンフリクトがプロジェクトの進捗やチームの協力関係に実害を及ぼし始めたときです。タスクが停滞している、関係者間のコミュニケーションが滞っている、といった兆候が見られたら、早めに介入することをおすすめします。
介入する際に気をつけること
介入する際は、どちらか一方の味方をするのではなく、事実と論点を整理する中立的な進行役に徹することが重要です。発注側PMに必要なファシリテーションスキル|会議を「決める場」にするためにで触れたように、対立点を可視化し、感情的な応酬ではなく、論点ベースでの議論に引き戻す役割を担います。
また、個人的な感情の対立にまで発展している場合は、全体会議の場ではなく、個別に話を聞く機会を設けることも有効です。公開の場での対立の表面化は、本人たちの関係修復を難しくすることがあります。
役割分担の曖昧さから生じるコンフリクトを未然に防ぐには、体制図・RACI表のテンプレートが役立ちます。noteで配布しています。
まとめ
チーム内のコンフリクトは、発注側・ベンダー間の調整だけでなく、自社内のメンバー同士の対立にも目を向ける必要があります。協調・妥協・強制・鎮静・回避という5つの対応スタイルを状況に応じて使い分け、実害が出始めたタイミングで中立的な立場から介入することが、チームの協力関係を維持するための鍵になります。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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