はじめに
DX推進の旗振り役を任された担当者が、社内で孤立してしまうケースは珍しくありません。経営層からは「早く成果を出してほしい」と言われ、現場からは「余計な仕事を増やすな」という反応を受け、板挟みの状態で孤独に動き続けることになります。DX推進担当者が孤立しないために、どう社内を巻き込んでいけばよいのかを整理します。
DX推進担当者が孤立しやすい構造的な理由
DX推進は、特定の部門の業務ではなく、組織横断的な取り組みであることがほとんどです。しかし、担当者として任命されるのは多くの場合1〜数名で、明確な権限やリソースを持たないまま「推進役」という立場だけを与えられることがあります。各部門からすれば、DX推進担当者は「自分たちの業務に口を出してくる人」に見えてしまい、協力よりも警戒の対象になりがちです。
この構造の中で、DX推進担当者が孤立せずに前に進めるためには、個人の頑張りだけに頼らない仕組みが必要です。
巻き込みの第一歩:役割と責任を明確にする
孤立を防ぐための最初のステップは、DX推進における自分の役割と、各部門の役割を明確に定義することです。「誰が決めるのか」が決まっていないプロジェクトは必ず迷走する|RACIという考え方で触れたように、誰が実行責任(Responsible)を持ち、誰が説明責任(Accountable)を持ち、誰に相談・報告すべきかを明文化しておくことで、「DX推進担当者が一人で全部やらなければならない」という誤った認識を解消できます。
体制図・RACI表は、noteで配布しています。DX推進のような組織横断プロジェクトの役割整理にも活用いただけます。
巻き込みの第二歩:各部門に「推進メンバー」を置いてもらう
DX推進担当者がすべての部門と直接やり取りするのではなく、各部門に1名ずつ「推進メンバー(兼任でも可)」を置いてもらう体制を作ることをおすすめします。各部門の推進メンバーが、自部門内での調整や情報共有を担うことで、DX推進担当者の負荷が分散され、各部門側にも「自分ごと」としての当事者意識が生まれやすくなります。
巻き込みの第三歩:経営層を「後ろ盾」として明確に位置づける
現場との折衝において、DX推進担当者個人の説得力だけでは限界があります。基幹刷新プロジェクトにおける経営層の関わり方でも触れているとおり、経営層が「この取り組みは会社として進める」という姿勢を明確に示し、節目節目でメッセージを発信してもらうことが、DX推進担当者の後ろ盾になります。経営層の関与が見えない状態でDX推進担当者だけが矢面に立ち続けると、孤立はさらに深まります。
成果を小さく積み重ねて可視化する
DX推進は成果が出るまでに時間がかかる取り組みです。大きな成果が出るまで何も発信しないでいると、「何をやっているのかわからない」という周囲の不信感が募り、孤立を加速させます。小さな成果(一部業務の効率化、特定部門での成功事例など)を見つけ次第こまめに社内へ共有し、取り組みの進捗を可視化し続けることが、周囲の理解と協力を得るうえで重要です。
まとめ
DX推進担当者の孤立は、組織横断的な役割を個人に背負わせてしまう構造から生まれます。役割と責任をRACIなどで明文化し、各部門に推進メンバーを置いてもらい、経営層を後ろ盾として明確に位置づけることが、孤立を防ぐための具体的な対策です。あわせて、小さな成果をこまめに可視化することで、周囲の理解と協力を得やすくなります。
執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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