IT業界の「商流」とは?元請け・一次請け・二次請けの違いと発注側が知っておくべきこと

IT業界の「商流」とは?元請け・一次請け・二次請けの違いと発注側が知っておくべきこと

はじめに

IT業界の契約関係を表す言葉として「商流」という言葉を耳にすることがあります。「元請け」「一次請け」「二次請け」といった階層構造を指す言葉ですが、発注側の担当者の中には、この言葉の意味や、なぜそれを把握しておく必要があるのか、よく分からないまま案件を進めている人も少なくありません。

ベンダーの多重下請け構造、発注側はどこまで把握すべきかでは、下請け構造を把握すべき理由と把握の深さについて解説しましたが、今回はその前提となる「商流」という言葉自体の意味と、発注側として最低限押さえておくべきポイントを整理します。

商流とは何か

商流とは、ひとつの案件に対して、発注者から実際の作業者まで、どのような契約関係で仕事が流れているかを表す構造のことです。IT業界では、以下のような階層で呼ばれます。

  • 発注者(エンドユーザー):システムを使う立場の会社。今回の記事で言う「発注側」にあたります。
  • 元請け(プライムベンダー):発注者と直接契約を結ぶ会社。プロジェクト全体の責任を負います。
  • 一次請け:元請けから仕事の一部を請け負う会社。
  • 二次請け・三次請け:一次請けからさらに再委託を受ける会社。階層が深くなるほど、発注者から見た「距離」が遠くなります。

商流が深くなること自体は、業界の分業構造として一般的なものであり、必ずしも問題があるわけではありません。専門性の高い技術者を抱える会社が、元請けの体制に組み込まれて力を発揮するケースは多くあります。

商流が深いことで起きるリスク

商流が深くなるほど、発注側にとって以下のようなリスクが生じやすくなります。

1. 情報伝達の劣化:発注者の意図が、元請け→一次請け→二次請けと伝わる過程で、少しずつニュアンスが変わってしまう

2. 中間マージンの積み重ね:各階層で利益が乗るため、同じ作業でも最終的な単価が上がりやすい

3. 実際の担当者が誰か分からなくなる:発注者が接しているのは元請けの営業・PMだけで、実際に手を動かしている技術者の顔が見えない

これらのリスクは、SIerの見積もりは高い?妥当性をチェックする5つのポイントで触れた見積もりの妥当性確認や、複数ベンダーが絡むプロジェクトで発注側が整備すべき2つの仕組みで解説した体制管理とも関わってきます。

発注側が商流を意識すべき場面

商流を細かく管理することは現実的ではありませんが、以下の場面では特に意識しておくべきです。

  • 見積もりの妥当性を判断するとき:商流が深い案件ほど、各階層のマージンが積み重なり、単価が割高になりやすい
  • 品質・進捗のトラブルが起きたとき:問題の原因が、どの階層で発生しているかを切り分ける必要がある
  • 契約条件(再委託の可否)を確認するとき:請負契約では、契約書で制限しない限り、受注者は原則として自由に再委託できます。準委任契約では、民法上、再委託(復委任)に発注者の承諾が必要ですが、実務では契約書の条項で包括的に認めていることもあります。契約形態と再委託の条項をあわせて確認しておかないと、知らないうちに商流が深くなっていることがあります

商流を確認する具体的な方法

商流を把握する最もシンプルな方法は、契約の初期段階で元請けに「体制図」の提出を求めることです。体制図には、各社の役割分担とともに、契約形態(請負・準委任など)を明記してもらうと、SES・準委任・請負の違い|発注側が理解しておくべき契約形態で触れた契約リスクの把握にもつながります。

どの工程をどこまで深く把握すべきか、体制図の提出をどう依頼するかといった具体的な進め方は、ベンダーの多重下請け構造、発注側はどこまで把握すべきかで詳しく解説しています。

まとめ

商流とは、発注者から実際の作業者までの契約関係の階層構造のことです。商流が深いこと自体は業界の一般的な構造であり問題ではありませんが、情報伝達の劣化、コストの積み重ね、実担当者の不透明化といったリスクを伴います。発注側としては、見積もりの妥当性確認やトラブル時の原因切り分けのために、体制図を通じて商流の全体像を把握しておくことが重要です。


執筆者プロフィール:SIer(元請け)とITコンサルファーム(発注側支援)、両方の立場でプロジェクトに従事(通算9年)。要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応し、基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。

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