はじめに
複数のベンダーが関わる大規模プロジェクトでは、ベンダー間の役割分担や連携が曖昧なまま進めてしまうと、どこかで必ずコミュニケーションの綻びが生まれます。発注側が最低限知っておくべきプロジェクト管理の「型」でも触れたベンダーコントロールを、複数ベンダー体制ではさらに意識的に行う必要があります。
SIerで4年半、ITコンサルファームで4年半、要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応してきた経験から、複数ベンダーが絡むプロジェクトで発注側が整備すべき仕組みを解説します。
整備すべき2つの仕組み
①責任分界点と権限の一致
まず必要なのが、責任分界点を明確にすることです。どのベンダーが、どの範囲の作業に責任を持つのかを曖昧にしたまま進めると、問題が起きたときに「どちらの責任か」の確認だけで時間が浪費されます。
責任分界点を決めたら、それとセットでどこまでの権限を与えるかも決める必要があります。責任だけを負わせて判断の権限を与えない、あるいはその逆、という状態は、現場の混乱を招きます。責任と権限を一致させることが、複数ベンダー体制を機能させる土台になります。
②コミュニケーション計画の策定
次に重要なのが、コミュニケーション計画です。具体的には、以下を事前に明確にしておく必要があります。
- どのように連絡を取るか
- コミュニケーションツールは何を使うか
- 会議体はどう設計するか(誰が、いつ、何を話すか)
- どんな内容であれば、誰の判断を仰ぐべきか(エスカレーション基準)
これらを決めずにプロジェクトを進めると、ベンダーごとに報告のフォーマットも頻度もバラバラになり、発注側が全体像を把握できなくなります。
調整のポイント:PM/PLが全体を把握し続けること
プロジェクトが進む中で、状況に応じて会議体を増やしたり、コミュニケーションルールを追加したりする調整は当然発生します。ここで最も重要なのは、PMやPLが全体を把握し、管理できている状態を維持することです。
実際に、元請けがベンダーのアウトプットを十分に管理できておらず、顧客からの問い合わせに適切に回答できない、という事態に陥っていたプロジェクトを見たことがあります。その結果、コミュニケーションエラーやコミュニケーションコストの増加を招き、最終的には品質低下や工数のひっ迫といった形で悪影響が表れていました。複数ベンダーが絡むプロジェクトほど、「誰が全体を見ているのか」を曖昧にしてはいけません。
まとめ
複数ベンダーが絡むプロジェクトを機能させるためには、「責任分界点と権限の一致」「コミュニケーション計画の策定」という2つの仕組みを事前に整備しておくことが欠かせません。そして、プロジェクトが進む中でも、PM・PLが常に全体を把握し続ける体制を維持することが、品質低下やコミュニケーションコストの増大を防ぐ鍵になります。
契約面での責任分担の整理には、IPA(情報処理推進機構)が公開している「情報システム・モデル取引・契約書」も参考になります。
執筆者プロフィール:SIerで4年半、ITコンサルファームで4年半、要件定義からベンダーマネジメントまで一貫して対応。基幹システム刷新・DX推進プロジェクトに多数従事。


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